「モノサシ」を持って働いているか?
「客観的に自分を見ろ」というアドバイスがあります。
このアドバイスが過去に何千、何万、いや何億回と言われてきたことでしょう。
しかし、そんなに簡単に、「自分に足りていない部分」は見えないものです。
ただ、世の中には、それを可能にするものがあります。
それが数字です。
数字は、客観的な視点を与えてくれる「モノサシ」です。
「仕事ができる人」「急成長する人」には、ある共通点があります。
それは、物事を「数字で考えられる」ということです。
足りない部分を数字で確認して、正しく埋めようとする。
つまり、「数値化」の思考がものをいう。
いかなる時も、「感情」を脇に置き、「数字」で考えられること。
それがまさに、「客観的に自分を見る」ということです。
プレーヤーでも、優秀な人なら必ず備えている、「抽象的な考え方」ができる力。
それを本書では、「数値化の鬼」という思考法として与えましょう。
簿記や会計などの専門知識は必要ありません。
熱い思いを持って話す時も、思い入れのあるアイデアがあるときも、どんなときでも、頭の片すみには「数字」がある。
そんな戦略家であれ。
数字は常に未来のためにある
なぜ数値化をするのか、それを考えていきましょう。
それは、「未来」に目を向けるためです。
数字は、いま、自分には何が足りていないのか、どういう課題があるのか。
それを「見える化」しているだけです。
テストで20点が足りないのは、「次にどうすればそれを埋められるのか?」を考えるための手段です。
もちろん、過去のあなたに対する評価は下されます。
しかし、「じゃあ、次はどうするか?」が常にセットなのを忘れてはいけません。
そこまでを考え切って初めて数字は意味を持ちます。
その手前だけで終わっているから、数字を見ることがどんどん嫌いになります。
それはダイエットをしようとしている人が体重計に乗って現実を見ることを怖がっているのと同じです。
数字として表せるものは、さっさと受け入れて客観的に現実的にするしかありません。
そして、次に繋げるのです。
そうやって改善していき、次こそはうまくいったとしたら、どうでしょう。
途端に数字が好きになり、「数字」に向き合うのが楽しくなります。
その好循環をいち早く起こすのが、プレーヤー期間には求められることです。
評価せざるを得ない「結果」を出そう
組織にいる限り、上司が評価を下し、部下がそれを受け取ります。
すると、次のような疑問が出てくると思います。
「評価する側の人に問題があったらどうするのか?」
人は評価する他者への疑念が出てくるはずです。
そこに対する識学の答えは、こうです。
「組織に所属している限り、直属の上司から評価される存在として。あなたは働いている。だから、評価につながる結果を出そう」
どうでしょう。少し厳しい言い方に感じたかもしれません。
上司と部下の関係を正しく機能させるためには、「公平性」がとても重要です。
誰が見ても公平で明らかな評価を、上司は部下に対して下す必要があるからです。
それを可能にするのが、「数値化」です。
・売上がいくらなのか
・改善行動が「何回」あったのか
・期限を「どれだけ」守ったか
と、すべてのものごとを、いったん、数値化して評価するようにします。
1日を「数字」で振り返ってみる
とはいえ、いきなり数字のある会話ができるようになるわけではないでしょう。
そこでまずやってみてほしいのが、「自分の一日の行動を数字で考えること」です。
多くのビジネスパーソンは、半年や1年間で目標を設定していると思います。
そのゴールを漠然と目指している状態は、夏休みの宿題を抱えて「そのうちなんとかなるだろう」と思っている状態と一緒です。
中だるみしてしまい、後から焦って頑張るようなタイプの人を生み出してしまいます。
ここで大事なことは、大きな目標を「一日ごとに」分解することです。
これは、新入社員や若いプレイヤーであれば、上司によって管理されているかもしれません。
日報を書いたり、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」をする人もいるでしょう。
ちゃんと意図を理解した上でそれらに取り組んでいるなら、特に問題はありません。
しかし、多くの場合は、形骸化して仕方なく惰性でやっていることでしょう。
「言われたからテキトーに日報を書いています」
「なあなあのほうれんそうをしています」
そういう人が多いのではないでしょうか。
意図もわからずに、なんとなくやらされ感や義務感でやっていると、どんどん言い訳が増えます。
ごまかすのが当たり前になるはずです。
そうならないためには、一日ごとの数値化を「自分のため」にやるのです。
自分がどれだけやったのかを嘘偽りなく表すこと。
まさに、心を鬼にできるかどうかが試されます。
言い訳の多い「中堅社員」の共通点
日報やほうれんそうでテキトーなことを書いてその場を逃れるのか、ちゃんと数字と向き合って報告するのか。
これによる「差」は、年を重ねるごとに大きく開いていきます。テキトーな報告をしている人は、次第に次のような発言を平気でするようになります。
「結果は出ていませんが、こんなに頑張っています」
「数字以外の部分で貢献したので評価してください」
こうやって自分の問題点から目を逸らす行為は、「自己欺瞞」と言います。
この状態になってしまうと、なかなか直りません。
できてないことに向き合うのではなく、正当化して周囲に問題を押し付けるような考え方をしてしまうのです。
そのほうがラクだからです。
今の日本の会社組織は、このタイプの中堅社員を一定数、生み出してしまう構造があります。
それを何としても食い止めたいなと私は考えているのですが、若ければ若いほどまだ取り返せるチャンスがあるので、本書を読んでいるあなたは、そうならないことを願っています。
自分の足りない部分を考えることをしなくなり、すべて他人や上司、会社のせいにして考えてしまうようなら気をつけてください。
そうならないために、数値化が必要なのです。
数値化できる人は「失敗」が当たり前になる
数値化できるようになると、失敗を認めることができます。
「失敗しなくなる」のではありません。
「失敗を認められる」のです。
そもそも、ビジネスにおいて失敗はつきものです。
失敗があることが当たり前です。
私自身、失敗の連続です。
大事なことは失敗を失敗と認めて、次につなげることです。
同じ失敗を繰り返すことだけは、避けないといけません。
たとえば、目標を立てて英語を勉強するとしましょう。
「一日10単語を覚える」という目標を立てて、実行し、一日に8単語しか覚えられなかったとします。
そうであれば、次にどうすれば10単語が覚えられるのか、あるいは、そもそも10単語の目標が高かったのか。それを分析することができます。
失敗は貴重な情報です。
それを数値化して受け入れれば、絶対に次に繋げることができます。
しかし、日々、なんとなく「10個も覚えられないなあ」「集中力と気合が足りないないんだろうなあ」と繰り返していると、いつまで経っても改善されません。
なんとなくダイエットを始めて、「なかなかやせないな…」と思い続けるのと同じで、無駄な時間でしかありません。
失敗は数値化して次に繋げてこそ、結果を生みます
「自分に甘い人」の考え方のクセ
もっとも避けないといけないのは、失敗を失敗と認めないことです。
「アポを一日5件入れる」という目標があったとして、3件しか入らなかったときに、どのように受け止めるでしょうか。
「半分以上できたから、まあいいか」
「本気を出せば頑張れたから大丈夫だろう」
と、自分に甘い評価をしていないでしょうか。
自己認識の甘さによるデメリットは、「よく頑張った」「なんかダメだった」と、曖昧な評価を認めてしまっていることです。
そういう甘い見積もりをするのは、やめましょう。
失敗は失敗として正しく認識してこそ、次からは改善できる。
そのために「数値化の鬼」となりましょう。
そうでないと、失敗を隠すためにデータを改ざんする完了みたいな人になってしまいます。
仕事ができる人の共通認識とは何か
本書のゴールは、あなたが「仕事ができる人」になることです。
そのための思考法として、「数値化の鬼」という話をしていきます。
ただ、「仕事ができる人」という表現には注意が必要です。
なぜなら、「はじめに」でも述べたように、それは「数字」ではなく「言葉」だからです。
どんな人が「仕事ができる人」なのかは、人それぞれ定義が異なるでしょう。
試しに周りの人に「仕事ができる人ってどんな人だと思う?」と聞いてみてください。
おそらく、一人一人、異なる答えが返ってくるでしょう。
そこで、まずは定義を揃えておく必要があります。
ここでいう「仕事ができる人」というのは「評価者からの評価を得られる人」です。一般企業の社員であれば、上司が評価者です。
経営者であれば、マーケットのお客様が評価者です。
それを言うと、「上司の評価がすべてではないのでは?」「ちゃんと評価できない人が上司になった場合はどうするの?」という意見が飛んできます。
だからもっと詳しく言うと、「上司と部下の間で認識のズレのない評価を得られる人」です。
つまり、それが「数値化された評価」のことです。
受験のように、点数を取れて求められた数字をクリアできた人が合格をもらえるイメージです。いくら頭がいいことをアピールしても東大にいれてもらえるわけではありませんからね。
ビジネスは結果ファーストで
たとえ、上司が嫌いであっても、評価は勝ち取らないといけません。
ここでも学校のテストをイメージしてもらえばいいでしょう。
いくら授業中に寝ていようと、先生に目をつけられていようと、テストで100点をとってしまえば、評価せざるを得なくなります。
とはいえ学校であれば、「内申点」というものがあるので、テストだけが評価点対象にはならなかったかもしれません。
しかし、社会は違います。
ビジネスの世界では、結果を出している人が勝つのです。
そんなに頑張っているように見えていなくても、ちゃっかり大口の契約を取ってくる要領の良い人がまわりにいませんか。
ぜんぜん残業していないのに、大事な仕事ではなぜかうまくいく人もいないでしょうか。
もちろんわざと不真面目にすることはありませんが、それでも「結果を出して評価されている」というのは「仕事ができる人」に間違いありません。
プロ野球選手でいえば、普段どれだけ派手に遊んでいようが、試合で活躍してくれればいいわけです。
やり方は人それぞれで「自由」
識学の教えには、上司は部下の「プロセスを評価しない」という考えがあります。
これは、ゴールである「目標(数値化されたもの)」を設定したら、あとはどのように部下がそれを達成するか、その選択肢の権限を与えることを意味します。
つまり、目的さえ決めてしまえば、そこまでの生き方は自由なのです。
電車を使っても、バスを使っても、自転車を使っても、自由です。
個人の能力によって試行錯誤してもらうことで、思わぬ近道を発見したり、自分に取って効率のいい交通手段を見つけることができるからです。
自分で業務内容を改善して、初めて人は成長するということです。
トークスキルが高いのであれば、それを磨いて目標を達成する道もあるでしょう。
逆にトークが苦手なのであれば、ロジカルなメールで目標を達成する方法もあるかもしれません。
目標をクリアにする方法はいくつもあります。
上司が決めたプロセスを押し付けることを、本書では否定しています。
とはいえ、「仕事ができる人」に共通する「型」があるのはたしかです。
コメント